アムステルダムで Web3 カンファレンス Devconnect に参加した
2022年 4/17 - 4/25 にかけてアムステルダムで開催された Devconnect というカンファレンスに参加したので、そこで得た知見、ブロックチェーンや web3 が向かう先について感じたことをまとめます。
Devconnect とは
Ethereum を中心としたブロックチェーンと Web3 にまつわるトピックをテーマに、さまざまなイベントが一週間かけて開催されるカンファレンスです。トピックとしてあげられていた一覧をみるだけでも実に多岐に渡っていたとわかります。
期間中のパーティなども含めたイベントはゆうに 100 を超え、世界各国からものすごい数の人たちが集まっていました。また期間中はコワーキングスペースが提供され、作業に集中したり、人と交流することができます。
参加したイベント
今回自分がこのイベントに参加することにしたきっかけは、参加していたゼロ知識証明を学ぶオンラインコース ZKUniversity の同じコホートの参加者同士で現地に集まろうという話になったからです。またゼロ知識証明を利用している会社も数多く集まり発表やワークショップを行う点も自分としては参加する動機として十分でした。
各イベントごとにチケットが販売されるのですが、抽選やセレクションがあり、結果的に参加したのは Layer2 Amsterdam, zkSummit、WorldCoin meetup の3つでした。
Layer2 Amsterdam
Layer2ソリューションを提供する各社によるイベント。開発中の機能や今後の取組みについて話してました。zkRollupがホットなトピックで、それをテーマにしたトラックも展開されていました。zkEVMについては各社まだmainnet投入に向けて仕込んでいるなという印象でした。
Optimismのエアドロが話題になってますが、 devconnectでの各L2のリーダーシップによるファイアサイドチャットにて、zksyncのceoがzkporter (zkrollupのdata availabilityのプロトコル)がローンチした暁にはトークンを発行すると明言してた話を投下しておきます。 pic.twitter.com/onS4rgCtPa
— Tomoaki Imai (@tomoaki_imai) April 27, 2022
zkSummit
ゼロ知識証明に関するポッドキャスト zeroknowledge.fmが主催したカンファレンス。ゼロ知識証明における証拠生成手法の提案や、数値回路を書くためのツール、ゼロ知識証明で使われるハッシュ関数の解説など、学会発表かというレベルで超難易度高かった…。
WorldCoin meetup
世界中の人に暗号コインを配るという野望を持ってプロダクトを開発しているWorldCoinのミートアップ。瞳の光彩を認証に使うのだけど、そのデータ秘匿化にゼロ知識証明が使われているということで興味を持ち参加しました。100億人にくばるための技術的課題を解決していく話やオープンソース化やSDKの提供などとてもおもしろかったです。
そういえばWorldCoinのイベント行ったときにオーブの実物置いてあった。思ったより軽い。これに顔認証やら網膜認証やらハッシュ生成など色んな技術が詰め込まれてるとな。 pic.twitter.com/CziqHWsCF7
— Tomoaki Imai (@tomoaki_imai) April 25, 2022
期間中にもイベント開催がアナウンスがされ、 DAO やサービスが開催するパーティやハッピーアワーにちょこちょこ飛び入りで参加しました。こういった情報はすべて人づてで招待された Devconnect の Telegram で共有されていたので、他のカンファレンス以上に人との交流が重要だなと感じました。
注目分野/トレンド
現地にてプロトコルの開発チームや dapps 開発者から聴いたり議論して感じた今後注目しておくべき分野やトレンドについて書きます。参加したイベントのバイアスもあることはご承知おきください。
プライバシー
web3 でのパブリックブロックチェーンやオフチェーンの活動について、どうプライバシーを保つかというのは大きなトピックとなりつつああります。現状では複数のアカウントを所有することでアイデンティティを切り分けるといった自衛策が取られていますが、ゼロ知識証明を使ってその課題に取り組む人々も出てきています。 例えば Ethereum 財団が支援する appliedzkp は Semaphore と呼ばれるオフチェーンの評価を個人情報が渡らない形でウォレットに紐つけるツールを開発しており、これは WorldCoin やその他のアイデンティティ系サービスの基幹技術として活用されています。
ブロックチェーン上の Decentralized ID を提供する予定の PolygonID も基幹技術にゼロ知識証明を利用しています。
Polygon のマスアダプションに向けた取り組み
Polygon はブロックチェーンをさらに世の中に広げるために、web2 やエンタープライズを視野にいれた戦略をとっているのかなと思いました。 例えばプライベートブロックチェーンを構築する Edge, トランザクションのプライバシーに考慮した L2 ブロックチェーン Night fall, NFT やメタバースを構築できる Studios などエンタープライズを視野に入れたサービスを展開してます。
Polygon Edge - Polygon
Polygon Nightfall - Polygon
Polygon Studios
ちなみに Polygon サービスの多くは無料で提供されるらしいのですが、L2 ソリューションが多くのサービスで使われることにより、ネイティブトークンの価値が上がって収益になるという仕組みらしいです。これがトーケノミクス...!
他の L2 サービスはまだユースケースよりもデベロッパーとのコミュニティ構築を重視しているので(そもそも mainnet も出てないケースもある)、Polygon は一歩先んじいているのかなと思いました。
Decentralized Workers
期間中、コワーキングスペースやイベントのコーヒーブレイク中に偽名で活動する人たちに沢山会いました。この界隈にいるひとたちはそもそも自分のプロフィール写真も PFP(Picture for Proof)やアバターであるケースが多いので、連絡先を交換する際は必ずセルフィーを撮って共有するようにしました。連絡先の交換も以前は FB や LinkedIn でしたが、今回は Discord,Twitter,Telegram のいずれかでした。
中には社内的にも偽名で通している人もいました。仕事において自分の実世界の要素は不要だしわざわざ明かす必要もないんじゃない?とのことでした。
今日話したPolygonで働いてる人が社内で完全に偽名("I'm working pseudonymously"と文字通り言ってた!)で働いてて、めちゃくちゃ感動してしまった。HRにだけ記録があるものの偽名なので自分には紐つかず、ビデオもオフ。我々の事業の話したらぜひ実現して欲しいと言われた。
— Tomoaki Imai (@tomoaki_imai) April 20, 2022
VC でクリプト系のソフトウェアエンジニアをしている高校生に"どうして偽名を使ってるの?"と聞いたら、"それが当たり前だから"と返事が来ました。web3 ネイティブの人が増えるに従って働き方や組織への所属のあり方が変わってくるのかもと感じました。
期間中あいた時間ど入り浸ってたコワーキングスペース、最後の数日はロンドンからやってきた16歳の少年とよく一緒のテーブル居たんだけど、RustもSolidityもバリバリ書いてハッカソンやってた。オンラインでの活動が偽名ゆえにこういう人がきっとゴロゴロいるのがこの世界… pic.twitter.com/5diQqurtVI
— Tomoaki Imai (@tomoaki_imai) April 25, 2022
業界の驚異的な変化
全体として感じた印象ですが、この業界はまだ若く、ものすごい勢いで変化してます。数週間のスパンで新しい技術やアイデアが生まれて同時に課題も生まれてます。
参加したイベントで登壇していた会社のサービスもまたベータないしはアルファフェーズ、あるいはものも全くない状態なところも散見されました。L2 ソリューションに関しては、どこもまだ仕込みの途中段階なので、この半年から一年でがらっと勢力図も変わってくると思います。
おまけ アムステルダムの様子
アムステルダムは窓が大きく、道が広くて、自転車が沢山走っていて、開放感のある町でした。
格式高い建物とモダンな作りの建物がいい感じで混ざってます。
みんな英語が流暢に話せてコミュニケーションにはなんら困りませんでした。
podcast
Podcast でもこのカンファレンスについて話したのでよかったら聴いてください!