先日 JABI(Japan America Business Initiatives)というグループが主催するイベントにて"シリコンバレースタートアップのリモート開発"という題目で登壇しました。おおまかな概要としては、
- ベイエリアでは採用コストの問題からリモートチームを国内外につくる傾向が COVID-19以前からあった
- リモートではコミュニケーションの緩急をつけることで効果を最大化する
- リモートでおきやすいチーム間のモチベーション格差を、コミットメントを高めることで埋める
といったことについて話しました。スライドはこちらです。
さて、この講演の Q & A セッションにて以下のような質問がありました。
「リモートワークが進む中でシリコンバレーで起業するメリットはあるのか?」
これは非常に鋭い質問だと思いました。ベイエリアに住む人たちも皆このことについて議論しています。まず、住むという点について、話を聞いたりニュースを見る限り、この地を去る人は増えつつあります。この影響を受けて、ベイエリアの平均家賃は去年と比較して15%ほど下落しているという話です。
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実際、周りでも起業家の友人も含め何人かが去っていき、知人の企業もオフィスをクローズしたり、他へ移転するケースも出てきているようです。シリコンバレーで起業するメリットに、ここに集まる人たちとの交流や刺激がありますが、間違いなくこの半年間は失われているし、それにともなって人も去っているのかもしれません。
しかしながら、COVID-19が収束後もその傾向は続くでしょうか。自分は、テック界隈の人々はある程度は戻ってくると考えています。
そもそもシリコンバレーにおけるテック産業は、スタンフォードとバークレーという全米トップクラスの大学があり、そこから輩出される技術力やアントレプレナーシップを持った学生や教員が源泉となっています。また彼らの受け口のひとつである Big Tech companies(FAANG) も、この地におけるスタートアップエコシステムの中心となっている。そして今のところGoogleやAppleなどはCOVID-19収束後に社員がキャンパスにまた戻ることを期待しているようです。
大学や Big Tech Companies がこの地にある限り、この地におけるスタートアップエコシステムは生き続けると思います。
なので、中長期的に見れば、この地でスタートアップを始めることは意味のあると考えています。技術、ノウハウや情報が集まるところに人は集まる。もちろん、一部のチームは他所に作ったり、リモートとオンサイトが混在するような新しい様式にはなるでしょうね。
少し話はそれるけど、"交流"に関しては、今年は最悪な年です。
あらゆるイベントは最悪の場合は中止、あるいはオンラインで開催されています。ほとんどのイベントが無料で時間を気にせず参加できるので、それはとても嬉しいことだけど、本来なら素晴らしい機会であるはずのイベント前後の参加者同士のコミュニケーションは皆無となってしまいました。そうなってくると難しいのは、情報収集です。最近の技術動向やノウハウに関するキャッチアップは以前より主体的に行わないといけないと感じています。
そこで、この状況を打破するひとつの方法として、ポッドキャストを始めてみました。目的は、ベイエリアだけでなく英語圏で数ある良質な技術コンテンツ(ブログ、ポッドキャスト、カンファレンス)をインプットしつつ、せっかくなので情報発信して興味がある人達にも学びを提供することにあります。
ポッドキャスト名は Today I Learned(今日学んだこと)。Co-hostの Facebookに勤めるソフトウェアエンジニア Yusuke Kawanabeさんとともに、最近読んだ記事や学んでいる技術などについてお互いに紹介しあい、議論するスタイルをとっています。今後はベイエリアを中心とした日本外に住むソフトウェアエンジニアにも出演してもらい、その人の詳しい技術分野や所属先の話をインタビューする予定です。
podcasts.apple.com今日ちょうど3回目が配信されました。今回の内容は、ソフトウェアエンジニアの"特定領域に深くなりすぎるとキャリア的に袋小路に陥る"問題への処方箋に関する記事について、Big Tech CompaniesのキャリアラダーやTech Leadの役割、理想のキャリアパスについて話しました。
よかったら聞いてください!