12月中旬から1月中旬のおよそ3週間と少しのあいだ、ヨーロッパを旅しつつリモートで仕事をしていました。自分が働いている会社は現在サンフランシスコと日本に拠点があり、日本にいるメンバーも北海道や北関東など様々な場所からリモートで働いています。今回旅行中どう働いたのかという話に加えて、旅先で気づいたリモートチームを作るためにチームが備えるべきことについて書きました。
「遠い太鼓」にあこがれて
村上春樹さんの「遠い太鼓」という本はご存知でしょうか。「ノルウェイの森」を書き上げた頃の3年間を綴った旅行記です。当時村上さんはギリシャやイタリアに滞在していました。本によると、午前中きっちり10枚の原稿を書き上げ、午後は読書や音楽をしたり奥さんと食事を楽しむ生活をしていたそうです。
こんな生活をしてみたいと数年前からいろいろな人に話すと、たいていの場合「それができるのは村上春樹だから」と笑われていました。ところが今の会社のCEOに話すと、「いいんじゃないですか、ヨーロッパでリモート採用するときの参考にもなるし」というカジュアルな返事をいただいたので、じゃやってみますということで実行に移しました。
準備
ひとまず往復の飛行機とホリデーシーズンの宿だけ埋まるかもということでモン・サン・ミッシェルと年末年始のパリを確保しました。さらにジブリのモデルになった都市や街を見たいという奥さんの希望があったので、コルマー(フランス)、ストックホルム(スウェーデン)なども追加。あとの日程は旅行中にオーロラをみたくなったり、ベルリンの壁をみたくなったりしてバタバタと決めました。最終的に合計7箇所を移動しました。
- ドイツ(9日間)
- フランクフルト、ベルリン
- フランス(7日間)
- パリ、モン・サン・ミッシェル、コルマー
- スウェーデン(5日間)
- ストックホルム、キルナ
なお、日本発ヨーロッパ行きの飛行機を調べたところフランクフルトがヨーロッパの玄関口として飛行機代がリーズナブルなようです。ヨーロッパ圏はLCCが非常に充実しているので、フランクフルトを起点とすればどこでも行けると思います。
旅行以外の準備としては、チームに滞在時期や時差、休暇のスケジュールについて連携しました。ヨーロッパからのリモートワークという藪から棒な話にも「あ、いってらっしゃい」みたいなライトな感じで送り出してもらい本当にありがたかったです。
リモートで働く
訪れた国全てが同じタイムゾーンで、日本とは-8時間、SFとは+9時間の時差がありました。標準的な一日は以下のような具合です。
- 6-7時:
- 起床、そのまま当日のタスクの整理
- 8時:
- スタンドアップ(東京16時、USは23時)
- 朝食 ~ 12時頃:
- 東京チームと連携とりつつ仕事
- 昼 ~ 午後:
- 散策、あるいは移動
- 夕方:
- 早めの夕食
- 20時 ~ 24時頃:
- USチームと連携とりつつ仕事
どちらのリージョンともコミュニケーションを取るためにだいぶ変則的な勤務時間となっています。村上春樹さんのような生活は難しかったですが、日中はのんびり観光したり、現地で人と会ったりして過ごせたので、一日の充実感は高かったです。
年末年始以外の明確な休日は設定しておらず、平日に長時間の移動などがある場合は事前にチームに連携し、その分土日にキャッチアップしました。
今回の滞在は奥さんも一緒にいたことや滞在時の利便性を考慮したことがありAirbnbやホステルなどは利用せず、すべてホテルに滞在しました。 そのため仕事は午前中はカフェ、夜はホテルのラウンジを利用していました。移動中の電車や飛行機でも仕事していました。
良かったこと
日常的に非日常に片足を突っ込んでいるというなんとも贅沢な体験ができたなーというのが素直に良かったです。 コードを書いている2時間後にオーロラを眺めているなんてことなかなかないですよね。 あとはテンポよく仕事に取り組むことができたこともメリットのひとつかなと思います。 午前中にきっちり働いて少し疲れがでてきたころで一旦仕事を切り上げて違うことをして過ごすと、夜もリフレッシュした気持ちで仕事に臨むことができます。 現代社会では8時間続けて働くことが当たり前となっていますが、効率的に働くには最適化されてないのかもしれません。
大変だったこと
一方で打ち合わせの時間調整には苦労しました。基本的にかなり融通を効かせてもらったのですが、それでも早朝や深夜になってしまうこともありました。 例えば年始にチームの全体定例をやったときは、3拠点の時間を調整した結果、朝6時スタート(それでもUSは夜9時スタート)であやうく寝坊しかけました。もしヨーロッパでメンバーを採用する場合は、ミーティングに関するルールを作らないと持続性がないであろうという学びがありました。
もう一点大変だったことといえば、移動が疲れたことでしょうか。発着時間を気にしたり、慣れない異国の地での券売機の前で右往左往するのは思った以上に精神的な疲労が大きかったです。
今度海外でリモートワークする場合は、1、2箇所にとどまることでしょう。
リモートメンバーを迎えるために
さて、ここからは一人でリモートワークをしながら考えてみた、リモートメンバーが働きやすいチームのあり方についてふれたいと思います。というのも、リモートワークを実現するためには、リモートワークする人の頑張り以上に、チームの受け入れ体制が重要だと感じたからです。
コミュニケーションコストを低くする
リモートワークの天敵はコミュニケーションコストです。特に時差のある場合、必要な情報を受取るために時間調整するコストも馬鹿にならなかったです。以下の2つがチームで意識されていると、リモートメンバーの働きやすさはだいぶ違うのではないかと思います。
(1) 情報源をひとつに集約すること
例えば、優れたオンボーディングがあれば、メンバーが自分で情報を取りに行くことができます。有名な例だと、Basecampは社員向けガイドブックをオープンソースで公開しています。
技術的な仕様も含めて「ここを参照すればよい」というドキュメントを作り、それを適宜アップデートする習慣がチームにあると、新しいメンバーもスムーズにプロジェクトにジョインできるでしょう。
(2) ミーティングを避けること
ミーティングは認識をあわせる上で非常に有用なのですが、一方でミーティングに伴う調整やら準備に地味に時間を吸われます。
チームでは、以下のようなルールを設定して、効率良くミーティングをするようにしています。
- 40分以内
- ミーティングのゴール、アウトプットを設定する
- 目的が資料の確認だけであればSlackで共有するに留める
タスクにコミットメントする仕組み作り
リモートで働くということは「何時から何時までオフィスにいる」という世界線からは離れることになります。時間に自由が効く代わりに、コミットしたタスクに対して、結果を出す必要があります。
そのためにはチーム全員が"目標に対して責任を持つ"ことと、"タスクの達成条件を明確にする"ことが重要だと考えます。 "目標に対して責任を持つ"ためのひとつの方法としてはチームOKRの設定することがよいでしょう。 "タスクの達成条件を明確にする"にはスクラムやカンバンなどによるタスク管理環境を整えることがあります。
リモートメンバーを信頼するマインドセットの醸成
リモートメンバーが生産性を発揮するためには、"ひとりにしない(left alone)"ことも重要ですが、"ひとりで自走できる(be able to run alone)"も重要です。 そのためにはメンバーが自分で決断をできること、それを受け入れられるチームになることが重要です。それは仕組み作りもさることながら、マインドセットを変えていく必要がありそうです。 リモートメンバーを信頼するための"問いかけ"については以下のブログがとても参考になります。
Managing Remote Teams - A Crash Course - Startup Lessons Learned
まとめ
今回、旅をしながら仕事をしたことで、良い刺激にもなったしリモートワークに関する気付きがいくつもありました。もしこの記事を読んで「旅をしながら仕事したい」と思ったなら、まずはチームがそのような働き方を受け入れられる体制かを確認することから始めてみてはいかがでしょうか。
現在コーヒーショップとカレー屋さんを一緒に開拓してくれる仲間を探しています! 詳しい方↑のリンクから友達になってください!
サインアップすると自動的に友人になります。
なお、Chomp, inc.では新しいコミュニケーションの仕組みを一緒に創るエンジニアを募集してます。海外、リモート、柔軟に働ける環境です。興味あればぜひ連絡お待ちしております。お茶でもご飯でもしましょう。