日本向けのアプリとUS向けのモバイルアプリの違いはなにか
日本向けのアプリとUS向けのモバイルアプリを開発した経験から、よく「日本のアプリとUS向けのアプリの違いって何ですか?」と聞かれることがあります。UI、UX観点で色々な違いはあるのですが、個人的に最も違う点を挙げるなら、タイポグラフィだと思います。US、いやおそらくアルファベットを使う国のアプリは、タイポグラフィが日本のアプリと比べて圧倒的に重要視されています。
具体的にどういうことなのか、またもし海外向けアプリの設計に携わることになった時にどういう点を考慮すべきなのかについて書こうと思います。
タイポグラフィを意識したアプリ
活字(あるいは一定の文字の形状を複製し反復使用して印刷するための媒体)を用い、それを適切に配列することで、印刷物における文字の体裁を整える技芸
とあります。つまりいかにフォントのレイアウトを整えていくかというのがタイポグラフィになります。よく作られたアプリはタイポグラフィが美しく整えられています。
具体例をみてみます。USでとても人気なブログサービスにMediumというものがあります。このアプリで英語で書かれたブログを見てみてください。タイトルやフォントの使い分けが適度になされ、適切な情報量が一画面で参照できると思いませんか?
またNew York Timesもタイポグラフィがとても綺麗で読みやすいと個人的に感じます。文字組みがスッキリしていて見やすいです。
デザイナーのタイポグラフィに対する意識
USのデザイナーと仕事をして自分が一番関心したことも、タイポグラフィに対する意識です。
デザインのレビューや実際に実装したUIをみたデザイナーから、
「このビューは10文字分まで表現できればよいから、幅を調整して1行で表現できるようにしよう」
「最初のビューで最低限ここまで見えていたいからフォントとレイアウトのスペースを検討しなおそう」
というフレーズをしばしば聞きました。また英文字フォントも数多あるものから、ユーザーに与える印象を重視して選ばれました。そういったことを考慮したことが当時なかったので、とても新鮮でしたし、勉強になりました。
ちなみに自分の会社におけるUS向けアプリでは、現在2種類のフォントを購入し、レイアウトによりregular, semi bold, bold, lightを使い分けています。また文字組みはletter spacingも厳密に定義しています。エンジニアにとってはフォントやスタイルの管理はなかなか苦労が多いですが、完成物を見ると"こなれた見た目"になるので、やっぱり重要だなと感じます。
日本のアプリは表現や強調を重視している
一方で日本のアプリはタイポグラフィに関しては強く考慮はされてない気がします。そもそも日本語の文字数が多いがゆえに、フォントがOS依存のものに頼らざるを得ないという事情があります。文字間のスペースがなく、適切な改行が難しいということもあるでしょう。なので日本のアプリはタイポグラフィよりは、"言葉の表現”や"文字の強調"でいかに情報を適切に伝えるかという点で多くの工夫がなされていると思います。これが自分が考えるUS向けと日本向けのアプリの違いです。
ただこれは画面サイズやフォントに制約のあるアプリに限った話で、日本の書籍におけるタイポグラフィはUS以上に考慮されていると感じることもありますし、webでは載せられる情報量が異なるのでまた事情は異なると思います。
日本とUSのUIが共通な場合に苦労する点
以前、日本とUSで共通のUIで開発していたことがありました。その時に苦労したことは、想定する文字数やフォントが異なるがゆえにリージョンによってレイアウトが崩れてしまうといったことでした。
例えば価格表示をするビューがあるとします。10万円の価格だとすると、日本円は”100000円”(半角英数字6文字 + 全角)と表示します。USでは”$1,000”(半角英数字6文字)です。微妙に長さが異なり、元々USで綺麗に表示されるように組まれていたレイアウトが崩れることになります。
あるいはMediumで日本語ブログで見てみてください。行間が少しつめつめになっている印象がしませんか?これは英語で読みやすい行間を考慮したがゆえにこうなっているのだと思います。
このようにタイポグラフィに引っ張られるので、共通のUIを使いつつ各国で理想のデザインを作るのは大変難しいです。 自分は経験がないのですが、おそらくアラビア語などRTL対応が必要なアプリだとさらに難しいと想像します。
各国で使われるアプリの設計で考慮すべき点
このような日本やその他の国で使われるアプリを作ることになった場合、どう取り組んでいけばよいのでしょうか。
プロダクトの種類によってはデザイン性を多少犠牲にするのもありだと思います。マルチ言語対応しているGoogle PlayStoreのアプリは表示崩れがたまにありますが、目を覆うほどではありません。
しかし各国でピクセルパーフェクトなアプリを目指すのであれば、UI層はビジネスロジックから完全に分離し、リージョン別で組めるような設計を目指すべきです。
また、そのようなアプリのデザインについては、可能な限りその国のデザイナーがデザインまたはフィードバックすることが望ましいと思います。例えばアルファベットを使う国でタイポグラフィが重視されるように、国により求められるデザインは異なると感じます。
まとめ
日本向けのアプリとUS向けのモバイルアプリの違いについて、タイポグラフィという観点で自分が気づいたことをまとめてみました。どちらが良いというわけでなく、国ごとに求められるデザインが異なること、プロダクトの要件によってとるべきUI設計指針が異なることを知っているのは大事なことだと思います。また海外製のアプリはその国の言語で見てみると面白い発見があるかもしれませんね。